骨組段階

小説サークル『骨組段階』のブログ。作品情報や設定、小ネタなど更新しています。

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タツキ+セージ『睡眠中(寝相良し)』(氷梨) 


コンビでお題に挑戦しよう! 第一弾!

キャラはタツキとセージ。
お題は『睡眠中(寝相良し)』でした。

基本的には練習物なので、ヤマもオチもないです。
お題内容も相まって、すごくだらだらっとした眠たい話です。
話と呼べるかも微妙なくらいだらら~っとしてる気が。



追記から本編。

******





 ノックをしても返事はない。いつものことなので、セージは気にせず扉を開けた。
 武器になるルチルの調整を行っているタツキのラボ兼自室だ。相変わらず物が散らばっていて、地震が起きたら誰か死ぬんじゃないかと心配になるほどに書物やらダンボール箱やらが詰まれている。これで物の場所が理解できているというから驚きだ。
「タツキさーん」
 入り口で足を止めたまま声をかける。返事はない。
「ルチルのメンテなんですけどー」
 大抵は“ルチル”という単語に反応してのそのそと姿を現すのだが、今日はいくら待ってもタツキは姿を現さない。
「留守、かなぁ……」
 出直そうか迷ったが、タツキが留守にしていることは滅多にない。あったとしても、長時間の外出は少ないだろうと判断したセージは、このままタツキの帰りを待つことにした。
(そういえば、奥にソファがあったなぁ……)
 入り口で立っているのも疲れるので、セージはソファのあった場所へと向かう。距離的には入り口のすぐ右手に置かれているソファは、大量の物品により遮られ、辿り着くには大きく迂回しなければならない。自分の背の高さほどの物の山が崩れてこないかビクビクしながら、セージは進んだ。
 しばらくして、ソファにまで辿り着く。大きく息をつこうとして、慌てて止めた。
 ソファでタツキが寝ていた。四人がけの大きなソファだったが、長身のタツキには窮屈そうだった。足を放り出しながら、静かに寝息を立てている。
(……寝てる)
 約束の時間通り来た自分を放っておいて睡眠とは……。テイラーでは生真面目に生きたほうが損をするのだと誰かが言っていたような気がしたが、それは本当のようだ。
 自分の気配で起きたりしないだろうかと期待したセージだったが、タツキは起きる気配を見せない。ちょっとだけ腹が立ったが、わざわざ起こす気にもなれなかったので、セージは向かいのソファに腰掛けた。
 タツキはぐっすり眠っていた。いびきもかかなければ、寝言も言わない。規則正しく寝息を立てる姿は、一瞬だけ、死んでいるようにも見えてしまう。
(色白いもんなぁ……)
 まじまじと観察する。タツキが病気持ちであるということはセージも知っていた。何の病気かは知らないし、わざわざ聞こうとも思わない。こうやって、テイラーに関わっている以上、彼の病気は普段の生活には支障の無いレベルなのだろう。そうでなければ、あのガブさんが、ここに留まることを許すはずがないのだ。
(それにしても)
 ヒマだなぁ、と、セージは自分の身体を深くソファに沈めた。タツキの寝顔を観察しても、精々『ヒギリさんと似てるなぁ、やっぱり双子なんだなぁ』とか『ソサカくんと似てるなぁ、やっぱり兄弟なんだなぁ』とかぐらいの発見があるだけで数分で飽きてしまう。大量に積まれた書物が、一体何の本なのか少し気になったりもしたが、一冊を手にして他の全てを崩すのは嫌だったし、いくら気をつけても山を倒してしまうのが自分であるとセージは分かっているので近づこうとも思えない。とりあえず、傍に置かれたローテーブルに散乱した書類に目を落としたが、何が書かれているかちんぷんかんぷんだった。退屈は紛れない。
「意外と頭いいんだよなぁ」
 元の世界でならもっと、成果を残せたんじゃないだろうか、とセージは思う。タツキのいた世界がどんな場所だったかしらないし、そこで残せる成果って何だよ、と自分でもつっこんでみたりしたが、ぼんやりと思ったのだ。
 どうしてテイラーにいるんだろう。
 少なくとも、自分のような理由じゃないということだけは、はっきりと分かっている。たとえ理由が同じだったとしても、一心不乱に研究に夢中になれるタツキと自分では、比べることすら失礼なくらい自分は劣っているのだ。
 いつもの結論に辿り着いて、セージは軽くため息をつく。それから、考えることから逃げるように目を閉じた。


   ******



 時間の感覚はなかったが、寝すぎたということだけは分かった。
 今は何時だろう? うっすらと目を開ける。頭が痛い。そういえば、薬を飲むのを忘れていたような気がする。けれども、この程度の痛みなら大丈夫だろうと、頭を押さえながら起き上がる。カサカサと、腹の上に乗っていた用紙が何枚か散らばった。
「……ん?」
 時計の姿を探して視線を泳がせていたら、向かいのソファで眠っているセージの姿を見つけた。座ったままの体勢で、静かに寝息を立てている。時計に目をやると、約束していた時間を過ぎていた。
「起こせばいいのになぁ……」
 一人呟きながら、ソファに座りなおす。ヒギリもソサカも淀染もナオキも、タツキが寝ていたら容赦なく叩き起こしてくるのでそれが当たり前だったが、『起こすのが悪いから待つ』という選択肢があるのだということに改めて気づいた。アカリも自分が寝ていたら起こさないだろうから気をつけようと、ぼんやりと自分に言い聞かせながら、今からどうするべきか考える。
 自分を起こさずにいた相手を起こすというのは、何となく気が引けた。それに加え、タツキは人に起こされるのが大嫌いだ。自分がされて嫌なことは相手にしないのがマナー中のマナーであるのだから、例え自分が寝ているところを起こされていたとしても、セージを起こすのは躊躇っただろう。
 セージが寝ている間に、ルチルの調整を済まそうかと思ったがそれも出来なかった。彼はルチルをしっかりと握ったまま眠っているのだ。自分が動く気配で起きないだろうかとちょっと期待しながら、タツキはソファに座りなおしたが反応は無い。座ったままの体勢だというのに、セージはぐっすりと眠っているようで、規則正しく寝息を立てていた。
(まぁ、調整だけなら時間かからないし……大丈夫だろ)
 起きるまで待とうと決め、タツキは大きく欠伸をした。
 眠気覚ましに、セージの顔を観察してみる。意外と整った顔をしているんだなぁと思った。普段の言動が真面目すぎるからか、パッとしない印象が強かったが、中身が伴えばかなりモテるレベルじゃないか? と値踏みをしてしまう。ソサカほど、ヒギリの結婚相手を血眼になって探しているわけじゃないが、やはり意識はしてしまう。
(やっぱ組織内の方がくっつきやすいだろうしなぁ)
 変り種が多いテイラーでは期待すら抱けない輩ばかりだったが、セージにはそこそこ期待しても良いかもしれない。ただ、もしヒギリと一緒になったことを考えると、どうしてもセージが振り回される姿しか想像できない。
(……というか、しおらしいヒギリの姿が全く想像出来ないんだよな)
 それって意外とヤバいんじゃないか? と自分自身と相談しつつ、改めてセージを観察する。
 初めて会った時、聡明そうな目をしていると思った。今は閉じられて見ることは出来ないが、先を見据えた瞳をしていた。理解力も、そこから導く判断力も、きっと優れているのだろう。
(だから、迷うんだよな)
 あいつは優柔不断すぎる、と誰かが言っていたが、タツキはそうは思わない。色んなことが分かってしまうからこそ、慎重になるのだろう。ただ人一倍、慎重になっているだけなのに、臆病といわれるのはどういう気分なのだろう。
(そういうものだと、諦めるのか……?)
 優しいから、決められない。
 ただそれだけのことなのに。
(……まぁ、確かにちょっと、度は過ぎているけど)
 それでも許容範囲だろうと、タツキは思う。自分のことに精一杯で協調性がことごとく欠如した自分と比べれば、可愛いものだろうと。そこでふと気づく。
 どうしてテイラーになったんだろう。
 セージは何事もそつなくこなす。意志が弱かろうと、それだけの実力があれば、わざわざテイラーにならなくても生きていけたはずだ。それに、他の人員と違いここでしか受け入れてもらえないわけでもない。人間関係だってそこそこ形成出来る彼が、どうしてわざわざこんな所でうたた寝をしているのだろう。
 何かしらの理由があったのだろうか。そんなことを考えながら、タツキはまぶたを閉じる。


 ここにいることでしか自分を形成出来ない自分と違う。
 お互いにそう思いながら、
 お互いをそう羨みながら、
 二人はうとうとと、午後のひと時をまどろんだ。



 

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category: ◆小説(文字系ネタ)

2011/05/26 Thu. 00:21 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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