骨組段階

小説サークル『骨組段階』のブログ。作品情報や設定、小ネタなど更新しています。

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桜と、妖精と 

桜と、妖精と

2011.03.27 発行。五冊目。

メインキャラ:ナオキ




※サンプルのため途中で終わります※



 






   桜と、妖精と



 ガタコト、ガタコト、ガタゴト。
 電車は一定のリズムを奏でながら暗闇を進んでいく。
 そんな中、八重は目の前で寝ている少年を眺めていた。
 夜は遅く、あと一時間もしないうちに日付が変わる。そんな時間帯にある最後の電車に八重はよく乗車するのだが、同乗者がいたことは数えるほどしかない。今日はその数少ない珍しい一日だった。
 目の前で座る少年は、電車に揺られるのが心地よかったのか完全に眠っていた。目を閉じ、電車と一緒に頭をぐらぐら揺らしながら眠っている。完全に寝過ごしているのだろうなぁ、と思いながらも、八重は少年の寝顔を眺めているだけだった。
 七つほど前の駅で、少年は一度目を開けていた。寝起きでぼんやりとした瞳をきょろきょろと動かしたのだが、目的の駅はまだだったらしく、再びまぶたを閉じてから終点に辿り着こうとしている現在まで、そのまぶたは動かなかった。
 その時見た彼の瞳を、八重は忘れられなかった。しっかりと見ていたわけではないので見間違いなのかもしれないが、少年の瞳が赤く見えたからだ。
 幻のようなその赤色を、出来ることならもう一度見たい。
 瞳に夕陽が映りこんでいるだけかもしれない。
 ただ単に、カラーコンタクトをしているだけかもしれない。
 それでも、八重はもう一度少年の瞳を見てみたかった。
 いつ起きるのだろうと向かいの席で動かない少年を見ていたら、いつまで経っても起きなかった。八重の目的地は終点の駅なので問題なかったが、少年がもっと手前の駅で降りるつもりだったのなら少し申し訳ないことをしたかもしれない。
(でもねぇ、いきなり声をかけるわけにもいかないでしょ)
 それに、八重は興味のあるものを目の前にすると、他の事が見えなくなる性格だ。少年の瞳をじっと見つめて会話が成りたたず、困惑するであろう少年の姿を思い浮かべると迂闊に話しかけることは出来なかった。
 電車のアナウンスが終点到着を告げる。ギィギィと今にも壊れそうな音を立てながら電車が止まった。八重は電車を降りようと立ち上がり、足にかけていたコートを羽織ったが、少年はぴくりとも動かない。
(……死んでないわよね?)
 心配になった八重は、そろそろと少年に近づいた。顔を近づけると、すーすーとか細い呼吸音が聞こえる。どうやら死んではいないようだった。
「もしもーし」
 車掌の仕事を減らしてあげようという名目で、八重は少年に声をかけた。彼は顔をしかめて、もぞもぞと身をよじっただけで、目を開ける気配はない。
「君、いつまで寝てるの? もう終点よ、起きなさい」
 そう声をかけると、少年はぱちりと目を開けた。八重が赤いと思っていたのはやはり単なる目の錯覚だったようで、彼の瞳は髪と同じ、真っ黒な色をしている。
 寝起きの瞳はどこかぼんやりとしていて、焦点が定まっていないようだった。ぼーっと八重の顔を見上げた少年は「……誰?」と小さく呟いた。
「誰でもないわよ、ただの同乗者」
 寝起きで誰かと勘違いしていたのだろうか。八重は名乗るほどのことではないと判断してそう答えた。
「それより君、さっさと降りないと、いつまで乗ってんだーって車掌さんが怒りにくるわよ」
「……ふぅん」
 少年はそう頷いて、すっくと立ち上がった。そんな彼を見て八重は驚いた。
 思っていた以上に少年の背が高かったのだ。ヒールを履いた八重でさえ、視線を上げなければ彼の目を見ることが出来ない。ひょっとすると、少年ではなく青年というべきなのかもしれないと思いながらも、八重はぼんやりとした足取りの少年に続いた。
 駅は無人なので車掌に代金を支払わなければならない。当然、少年も電車の先頭に向かうと思っていたのだが、彼は当然のように改札を出ようとする。
「こらこら!」
 思わず八重は彼の腕を掴んだ。


(2P~3P)

 

 


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category: ◆小説(文字系ネタ)

2011/08/07 Sun. 16:13 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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