骨組段階

小説サークル『骨組段階』のブログ。作品情報や設定、小ネタなど更新しています。

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ファイ+ソサカ『力の抜けた座り方』【前編】(氷梨) 

コンビでお題に挑戦しよう! 第三弾!

キャラはファイとソサカ。
お題は『力の抜けた座り方』でした。

相変わらずの練習物。
書いたのだいぶ前だから、ソサカがまだ「僕」って言ってました……。(現在は「ぼく」)
気づいた限りは直しましたが、名残が残ってたらすみません><
前編後編に分かれていますが、ストーリー性があるとかではなく、無駄に長いだけですよ。
ちなみに、ソサカをはじめとする三姉弟がテイラーにきて間もないころのイメージです。

※若干女性向けな雰囲気ですので、苦手な方はご注意ください※
かといって、女性向け好きな方は期待しないでください。特に何もないです(´・ω・`)

追記より本文。








******************



 食事時間のピークが過ぎ、ソサカは食堂に顔を出した。それぞれが思い思いに食事をする食堂。基本的には使用した者が汚した分は掃除し、綺麗にしてから席を立つのがルールだったが、その『綺麗』のレベルに個人差がある。椅子や机がズレていたり、食事のカスが残っていたり。そうしたやり残された清掃を行うのもソサカの仕事だった。別に与えられた仕事ではなかったのだが、綺麗好きなソサカはそんな状況を放っておけなかったのだ。
 今日もいつも通り、人影の少なくなった食堂を整える。
 広い食堂が無人になることは少ない。食事をするだけがここの使い道ではないのだ。気晴らしのために気の合う仲間とお喋りしたり、小腹が好いたから自室から抜け出してみたりと、いつの時間でもそれなりに人の姿はある。今日も数人の利用者の姿があったが、ソサカはいつものことだと気にしていなかった。
 食堂の端から、テーブルを片付けていく。あらかた片付いたころに、声をかけられた。
「ねぇねぇ」
 振り返ると、派手な金髪の青年がいた。椅子に腰掛ける――というよりは全体重を預けて、ほとんどずり落ちるような体勢で座っている。今にもバランスを崩して倒れるのではないかと心配になる座り方だ。
「良かったら、ぼくとお茶しなーい?」
 ティーカップを掲げながら、青年はそう言った。彼のとろんとした目は間違いなくこちらに向けられていたが、セリフからして自分に向けられた言葉ではないことは明白だった。
 ソサカは男だ。髪こそ伸ばして、実の姉よりも長かったりするが、だからと言って誤って女性を口説くようなセリフを(それも耳に絡まるようなねっとりとした甘い声で)向けられるとは思えない。人違いだろうとソサカは判断し、辺りを見回してみたが、女性の姿はおろか、ソサカの他に人の姿がない。
「きみだよ、きみ。ソサカくん」
 くすりと笑って、青年は言った。どうして自分の名前を知っているのか不思議だったが、姉か兄の知りあいなのだろうと推測する。が、それはそれで問題が出てくる気もする。
 見た目が派手なのは個人の趣味の範囲だと思えば仕方がないし、どこか危なそうなとろんとした目は生まれつきのものかもしれないし、まとわりつくようなねっとりした声も親から授かったものだと思うにしても、この軟派さはいかがなものか。二人の交友関係に口を挟む気はないが、一体どういう関係なのか不安になってくる。
 そんなことをぐるぐると考えながらでは、青年に対して何を言っていいかわからなくなり、ソサカは何も言えずに固まってしまう。
「もー、そんなに警戒しないでよぉ」
 ぷぅ、と口を尖らせる青年の姿に、ソサカはますます頭が痛くなる。
「えぇと……」言いたいことも聞きたいことも沢山あったが、「とりあえず、どちら様でしょう?」
 青年と直接的な面識がない以上、ソサカはどういう態度をとるべきなのかが計れない。まずは、青年の身元を判明させるのが一番だ。
「んー?」
 と、青年は一度首をかしげ、それから椅子に預けっぱなしにしていた上体を起こす。が、今度は机に体重を預けるような――上体ごとなだれ込むような形で机に乗り出す。
「えー、えー、えぇー! 何それ何それ。ひょっとしなくともぼくのこと忘れちゃったわけぇー?」
 うそだうそだぁ! と騒ぎ出す青年を見下ろしながら、ソサカは居心地の悪い思いで頷いた。「す、すみません……」
 人の名前や顔を覚えるのは得意な方だと思っていただけに、ソサカのダメージは大きい。というか、これだけ派手な格好の異質な存在を忘れろという方が無理である。
「兄さんか、姉さんの知り合いでしょうか……?」
「ん~」
 肯定にもとれるような声を発しながら、青年は首を傾げた。
「違いますか……?」
 そうなると、本当に自分が忘れているだけなのかと思えてきて、ソサカは動揺した。
「すみません、本当に覚えてなくて……」
「ふふっ、いいよ、いいよー。気にしないで」そう青年が笑うのを見て、ソサカがホッとしたのも束の間、「って言っても、ソサカくんは気にしちゃうでしょ? だから、お詫びにぼくとお茶しよーよー」
 何となく嫌な予感を覚えながらも、ソサカは「はぁ……」と青年の斜め前の椅子に腰掛ける。お茶をしようという割には、ティーポットもティーカップもそっちのけで机に乗り出している青年は、にまにまと顔を緩ませながらこちらを見上げている。
「それでその、」粘着質な視線に耐え切れずに口を開く。「一体ぼくに何の用でしょうか」
「んふふふふ!」
 急に嬉しそうに笑い声をあげる青年に、ソサカは困惑した。一体今の何が面白かったのだろうか。
「やだなぁ、ソサカくんってば。特別な用がなきゃ、声もかけちゃダメっていうの?」
「あ、いえ、そういう訳では……」
「ふふふ。まぁ、用はあるんだけどねぇ」
 どっちなんだ。立場的に弱者なソサカは心の中でつっこむ。
「ぼくはねぇ。きみと仲良くなりたいんだよ」
 女性を口説くような甘ったるい声に、ソサカの背筋に寒気が走る。
「そう思うことにさ、理由なんて必要なの?」
 ふふふ、と笑う青年。自分の両手を膝の上に置いておいてよかったとソサカは思った。このノリでは、机の上に手を置いていたらしっかりと握られていたに違いない。
「……それで、貴方は一体どちら様でしょう?」
 質問に答えることも触れることもせずにソサカはいう。
「誰だと思う?」質問をスルーされたこともどこふく風で、青年は耳に絡むような声でいう。「お兄ちゃんの仕事仲間? もしくは、お姉ちゃんのよき相談相手? あ、ひょっとすると、彼氏かもしれないよぉ、ぼく」
「それはないです」
 ソサカがキッパリというと、青年は「即答しなくてもいいじゃんかぁ」と苦笑する。
「どれだっていいんだよ? ぼくときみの間には関係ないことなんだからさぁ」
 関係あるだろ、というツッコミを心の中で決めること二度目。青年はじわじわと、机に乗り出す割合を増やしながら顔を寄せてくる。とろんとした目を細め、にっこりと笑う。
「だってさぁ、きみはぼくの運命の人なんだからさ」
 ぞわり、と背筋が凍るのを感じた。思わず青年が座っている椅子を蹴飛ばして席を立つ。偏った体重のせいで傾いていた椅子は、ソサカに蹴られたことによりダルマ落としのようにすっ飛んだ。ダルマであった青年は「ぎゃんッ!」と悲鳴を上げて床に崩れる。
「き、気持ち悪いこと言わないでくれますかッ!」
 机や椅子をいくつも挟んで青年と距離をおきつつ、ソサカは思い切り叫んだ。
「やだなぁ、別に気持ち悪くなんかないじゃんかぁ。誰かに惹かれたり恋したり愛したり愛し合ったりするのは当然のことで、むしろ尊いことなんだよ?」
「そういうことをいう相手はぼくじゃないでしょう!」
「えー? どうしてソサカくんじゃダメなのさー」
「ぼくは男ですよッ!」
「ぼくだって男だよー?」
 けろりと返す青年を見て、ソサカは、もう駄目だ! と背筋が凍りつくのを感じた。慌てて辺りを見回すが、今日に限って食堂に人気はなく、ホールにはソサカと青年の二人しかいない。人気のなさをここまで呪ったのは初めてだった。
 背中を見せたら恐ろしいことになりそうだったので、ソサカは青年から目を離さないようにしたままじりじりと後ずさる。青年はその様子を嬉しそうに微笑みながら眺めている。
「うふふふふ、脅えた顔も可愛いなぁ」
「だから気持ち悪いこと言わないでくれませんか!」
「……そういわれると、……確かにそうかも」理解してくれたのかとほっとしたのは間違いで、「ぼくが攻めっぽいのって、なんか気持ち悪いよねぇ」
「どう気持ち悪いんですかそれは!」
 混乱しすぎて何が何だかわからなくなってきたソサカに、青年はゆったりと近づいた。
「だってさぁ、どっちかっていわなくても、ぼくは受身な方なんだよ? それがこう、追う側の立場になるってのはどうなのかと思うんだよねぇ」
「だ、だったら、今すぐ追うのをやめたらいいのではないでしょうか……?」
 机と椅子を倒さないように気をつけながら、ソサカはじりじりと後ずさる。
「えー、だめだよぉ。恋は諦めたら負けなんだよッ!」
「これのどこが恋なんですかッ!」
 どう見ても変だろうと、ソサカは泣きたい気持ちになる。どう見たって、変質者に襲われているとしか思えない。
「今、ソサカくんは、ドキドキしてる。動機と息切れ! それが恋なんだよッ!」
「絶対に違いますッ!」
 吊橋に脅える方がずっとマシだとソサカは思う。
「お願いですから、これ以上近づかないでくれますか?」
 単なる会話を続けていてはらちが明かない。ソサカは平静を装った低い声でいう。が、青年は驚いた様子もなく、むしろ何故か嬉しそうにスピードを増して近づいてくる。
「そういわれると、余計に近づきたくなっちゃうなぁ」
「ほんと貴方ってどういう神経してるんですか!」
「もー、貴方だなんて他人行儀だなぁ。ぼくのことは、ファイって呼んでよぅ」
「今初めて名前を知りましたよ?!」
 散々聞いても答えなかったくせに、どうしてこのタイミングで。ソサカはますます混乱したが、彼の名前以外にも分かったことがあった。
 彼に話は通じないということ。
 武力行使も仕方ないということ。
 じわじわと距離を詰めてくるファイを睨みつけながら、ソサカは立ち止まり、食堂の椅子に手をかけた。
「あれ? 追いかけっこ終り?」
「逃げてるだけじゃいけないと思いまして」
「うふふふ。いーよぅ、いーよぅ、その視線。ギラッギラに鋭くてさぁ、ぞくぞくする」
 恍惚とした表情で、ファイはソサカに近づく。ソサカは椅子の背もたれを手に、椅子を持ち上げた。四本の脚がファイの方に向けられる。
 がつ、とファイの腹をめがけ、ソサカは椅子を突き出した。両脇に椅子の脚が二本ずつくる形となり、刺す股の要領で捕まったファイは、腹部に打撃を受けて「ぐぇ」と呻いた。
 彼の足元が揺らいだのをソサカは見逃さない。そのまま腕に力を入れて、転倒させる。
 これでしばらくは身動きが取れないだろう、とほっとしたのも束の間。
「うふふふ、ソサカくんってば積極的だなぁー、もぅ」
「だから気持ち悪いこと言わないで下さい!」
「こんな所で押し倒さなくたって、ぼくはいつだって準備万端なのにさぁ~」
「人の話聞いてますかッ?!」
 寒気を通り越して、何だか呆れてきたソサカ。ぐったりと疲労を感じながら、大きくため息をつく。
(捕まえたはいいけど、どうしようこの人……)
 姉に処理を頼もうにも、顔をあわせさせるのがまず危ない気がしたし、引きこもりな兄はここに来ないだろうし……。そこでようやく気づくのだが、ファイをどうにかしようと誰を頼るにしても、一旦この場を離れなければならない。その間に逃げられそうな気がして、ソサカは困り果てた。
 と、そこに。
「あっれー? ソーちゃんどないしたん?」
 場違いな明るい声が聞こえる。振り返るとこももの姿があった。
「白滝さん!」
 いつもならファイほどではないが厄介な相手の一人であるこももだったが、切羽詰った状況のソサカにはこももさえも救世主に見えてしかたがない。
「白滝さんやなくて、こもたんって呼んでーなぁ」
 ぷりぷりといつものように自分の呼び名を訂正しながら、こももは二人に近づいてくる。
「なんやガタガタ騒がしかったけど、どないしたん?」
「あ、白滝さん、近づかない方が! 不審者がいて、今捕まえたところでして!」
「不審者じゃないよぉ、愛の使者だよぉ!」
 椅子の下からひらひらと手を振りながら、ファイはのんびりした口調でいう。
「こういう類の不審者でして……」
 相手をするのが疲れてきたので、ソサカはこももにそう説明する。「ツレないなぁ、もぉ」とファイは不満を口にする。
 こももは椅子の下を覗き込んで、
「なんや、誰かと思ったらファイくんやんかー」
 と、笑った。
「白滝さんの知り合いですか……?」
「せやでー。あ、ひょっとせんくても、不審者ってファイくんのことなん?」あっははっ! と、こももは声を出して笑う。「ちゃうちゃう! まぁ、確かにファイくんは個性的やけど、不法侵入者でも不審者でもあらへんで?」
「こ、個性的……?」
 これを個性的ですますのか……と、ソサカは唖然としたが、もう反論する気力はどこにも残っていない。
 そんなソサカのことはおかまいなしに、こももはさらさらとファイについて教えてくれる。
「なんや、もう知っとるかと思っとったわ。えとな、ファイくんはハウンドの所属で、タッちゃんと同じ技術士やな」
「そうそう、ぼくって手先が器用なんだよー」ずりずりと椅子の下から這って出てきながら、ファイはそういう。「だからさ、ソサカくんのルチルが壊れたら、ぜひぼくらのラボに持っておいでよ。隅から隅まで直してあげるからさ♪」
「結構です!」
 ぴしゃりと即答して、ソサカは椅子から飛びのいた。間に椅子や机やこももを挟みながら、ファイから距離を置く。
「えー、どうして断るのさぁ」
「戦闘員じゃありませんから、ルチルは壊れません」
「えー? でも定期検査は重要だよぉ?」
「兄に頼んでありますし、修理も兄に頼みます」
 じりじりと二人の攻防が再会する。刺す股に使われた椅子を中心に、二人がぐるぐる回る姿を見て、こももは「なんや、二人は椅子取りゲームしとったんやな。ええなぁ、うちもやりたいわぁ」と的外れな感想を抱いたりする。当然、ソサカを逃がすわけでも助けるわけでもないので、この攻防はファイが飽きるまで延々と続けられたという。

>>>後編

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category: ◆小説(文字系ネタ)

2011/11/28 Mon. 23:29 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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