骨組段階

小説サークル『骨組段階』のブログ。作品情報や設定、小ネタなど更新しています。

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 ガブさんの特技欄には無茶振りという言葉が大きく記載されているに違いない、と僕が思うことは驚くことに週に三回程あったりする。
 テイラー本部にある第三司令室。僕の上司であるガブさんの仕事部屋であり、特殊任務を指示される場所でもある。呼び出しをくらった僕は、この間の任務で何かやらかしたのかなぁ……と心臓をひやひやさせながらそこへ向かったのだが、ガブさんに怒られることはなかった。
 代わりに「セージ! これはお前にしか出来ない仕事だ!」と任務指示書が渡される。その強引な押し付け方に嫌な予感がした僕だったが、任務指示書を受け取ってしまった以上それを見ないなんてことは選べない。恐る恐る書面を確認する。
『至急、キングオブ1123が誰か判明させよ!』
 題字からして頭が痛くなる内容だった。
「なんですかこれ……」
 書面に目を通しながら、ガブさんに聞く。
「斡旋所にずーっと貼ってあった仕事なんだがなぁ、誰も手に取ってくれなくて……」
「そりゃあ、こんな悪戯みたいな内容ですからね……」
「困ったエルピスが俺に何とかするよう言ってきたんだ」
「エルピスからの依頼なんですかこれが!」
 エルピスは僕が所属するイデアルの一番偉い存在だ。
 けれども僕が驚いたのは、エルピスからの依頼という重圧よりも、エルピスがこんな仕事なのか不安になるような内容を仕事として依頼していることに対する衝撃だった。
 …………なんというか。
 テイラーの偉い人――たとえば今目の前にいるガブさんに関してもそうなのだが、テイラーの幹部はクセ者が多い。仕事に関する能力は当然高いのだが、それ以外の――例えば性格とか思考回路とか習性とか、そういう人として根本的な部分に何かしらの問題があるような気がするのだ(僕なんかにそんなこと言われたくないとは思うが)。
 よくよく考えれば。
 そんな彼らを重用している段階で、エルピスも十分変わっているのだけれども。
「エルピス直々の依頼だからな。断る訳にもいかないだろう」
「それで僕に押し付けるんですか……」
「失礼だな。チャンスを与えているんじゃないか!」
「チャンス?」
「女子と話すチャンス」
「………………」
 余計なお世話である。
「そういう気遣いはいらないんですけど……」
 と伝えたところで、ガブさんの主張が変わるとは思えない。なんといってもエルピスからの依頼だ。ガブさんだって断る訳にはいかないだろう。
 仕方ないので、僕は任務について確認することにした。
「えーっと? キングオブ1123でしたっけ?」
 1123と書いて『良い兄さん』と読むらしい。指示書にはテイラーの中で誰が一番1123なのかを判明させるべしとある。
「……投票でも開催すればいいじゃないですか」
「それだと組織票とか出てくるだろ」
「………………」
「まぁ、こういうのはインスピレーションだからな。咄嗟に出た答えが本当になるのだが、考える時間が長ければ長い程その答えと別物になる可能性は高いだろ」
「確かに」
「あとは、他人の意見を聞いてしまうのも問題だな。自分は誰に投票した、だとか聞いてしまうと、ついそれに同調してしまう奴がいないとも限らない」
「そうですね」
 たとえば僕とか。
 ……なんてことは口が裂けても言えないけど。
「だから口頭確認するんですね」
 僕は頷きながらいう。たとえその行為に不満があったところで、僕がガブさんにぶーぶー文句を言ったところで何も変わらないのだ。大人しく従うことにする。
「それで期限は…………今日?」
「今日!」
 キリッとした顔で返される。
「え……今日?」
「今日!」
 ガブさんは以前ドヤ顔を崩す気配はない。
 どうやらこのまま押し通す気らしい。
 思う所はあったが、ガブさんを言いくるめたところで期限は伸びないだろう。最終の決定権は今回の場合エルピスにあるのだし、そうなれば僕は一秒でも早く調査に向かうべきだ。
 とはいえ。
「ほんとのほんとに今日ですか?」
 なんて、未練がましく聞いてしまうのは当然じゃないだろうか。僕の言葉にガブさんは頷きながら、
「ほんとのほんとに今日までだ」
 と、低音の渋い声で答えてくる。
「…………努力します」
 僕は肩を落としながら第三司令室を後にする。今度ガブさんから、『至急キングオブ無茶振りを判明せよ!』という仕事を任せられたら、僕は迷うことなくガブさんに一票入れることだろう。



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category: ◆小説(文字系ネタ)

2012/11/23 Fri. 20:14 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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