骨組段階

小説サークル『骨組段階』のブログ。作品情報や設定、小ネタなど更新しています。

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 キングオブ1123(良い兄さん)。
 聞き取りから得た票数で一位をとった者にその称号が与えられるらしい。残念なのはその称号にこれといった効力がないことだろうか。兄権限で飲み物を買いに行かせるとかそういう特典もないらしい。
 だったら何でそんなものを決める必要があるのか。
 それは僕が考えてはいけないことだ。
 考えれば考えるだけ、空しくなることだ。
 ……いや。
 ほんともう、なんでこんなことしてるんだろ、僕……。
 しょんぼりと肩を落としながら、僕は廊下を歩いていた。
 誰かに聞き取りをしないといけないとは分かっているのだが、どうもやる気が出ない。誰かの為とか何かの為とか、そういう必要に迫られた動機がなければ人間努力なんて出来ないのではないだろうか。仕事への不満が哲学じみた思考になりかけた僕だったが、廊下を横切った桃色を目にして慌てて駆け出した。
「アカリちゃん!」
 足を止めてもらうべく僕は彼女を呼び止める。肩口で切りそろえられた桃色の髪に、きらきらと澄んだ草原色の瞳。小柄な少女――アカリちゃんは僕の同期だ。
「セージくん?」
 突然呼び止められたアカリちゃんは、僕の方を見て目を丸くしている。
「丁度良かった。今、時間大丈夫?」
「大丈夫だよー」にこりと微笑むアカリちゃん。「それより、どうしたの?」
「いや、ちょっとガブさんに変な仕事を頼まれて」
「変な仕事?」
「話すと長くなるんだけど……」
 と、事情を説明しようとした僕は思わず口ごもる。よくよく考えれば、キングオブ1123をわざわざ口頭確認していく目的の一つとして、相手の本音を聞き出すというものがある。自分の発言が一票になると知ってしまえば、口にする答えが変わる人も出てくるのではないだろうか。
 目の前にいるアカリちゃんがそうとは思えない。どちらかといえば彼女は裏表のない性格で、いつも素直な意見を述べている。とはいえ、用心する事にこしたことはないだろう。僕は事情を説明する前に彼女に尋ねた。
「……えぇっと、もし、テイラーの中にアカリちゃんのお兄さんがいたとしたら誰がいい?」
「へ? ……え、わ、私、誰かの妹なの?!」
 何故か慌てだすアカリちゃん。
 いや、確かにアカリちゃんは妹っぽいけど、流石にそんな展開は起こらないだろう。
 僕ら、住んでた世界からして違うんだからね。
「……そうじゃなくて、もしもの話。普段お兄さんっぽいなーって思う人でもいいよ。とにかく、自分がこの人の妹だったら嬉しい、って人を教えてくれないかな」
「うーんと、そうだねぇ」
 僕の唐突な質問にも、アカリちゃんは素直に答えてくれる。
「やっぱり、ソサカくんかな」
 やっぱりそうだろうな、という答えをアカリちゃんは口にした。
「なんていっても優しいし、お料理が上手だし、すっごく理想のお兄ちゃんって感じだよね!」
「そうだよねぇ」
 そう頷きながら、僕はその答えを忘れなようにメモしておく。
 ソサカ君、ワンポイント獲得。
「理想のお姉ちゃんはやっぱりヒギリさんでしょー。お母さんはサーニャさんでー、お父さんは加護さんかなー」
 想像して楽しかったのだろう、アカリちゃんはえへへー、と笑いながら家族構成まで答えてくれた。
「ソサカ君がお兄さんで、ヒギリさんがお姉さんなら、アカリちゃんは末っ子だね」
「あ、ほんとだ!」
「もれなくタツキさんもついてくるね」
「……それはちょっとなぁ。部屋とかくちゃくちゃにされそう」
 アカリちゃんが渋るのも当然だろう。タツキさんの研究室はいつ行っても物が散乱して迷宮のようになっている。
「まぁ、ソサカ君が居れば片づけてくれそうだけど」
「それもそうだねー。……ってそれより、どうしてそんなこと聞くの?」
 きょとんと首を傾げられ、僕は慌てて事情を説明する。
「きんぐおぶいいにいさん……?」
「なんていうか、ちょっと変わった仕事でしょ」
「そうだねー。でもちょっと面白そう」
 にっこりと微笑んで、アカリちゃんはいう。
「ねぇ、セージくん。よかったら私も手伝っていいかな?」
「え?」
「キングオブ1123の頂点に誰が立つのかちょっと気になるし、……だめ?」
「いや、駄目じゃないよ。むしろ助かるくらいだし」
「ありがとう! それじゃあ、早速次の聞き取りに行かなきゃね! 聞き取りの順番とかって、指定はあるの?」
「うん。基本的には投票された人のところを辿って行くみたい。傍に誰かいたらその人にも話を聞くけど、それはあくまでもついでであって、僕らの意志で他の誰かのところへ向かうことは出来ないみたいだよ」
 誰に声をかけるかを選べるのは、最初の一人だけ。アカリちゃんに話しかけた以上、ここがスタート地点になる。
「じゃあ、次はソサカくんだね!」
 ソサカくんは誰を指定するのかなー、とアカリちゃんは何故かわくわくした様子だった。僕からすれば、彼の答えは既に決まりきっていて、手に取るようにわかるのだが、わざわざそれを口にして、楽しそうにしている彼女の気分を害するのも気が引ける。
 誰だろうねぇ、と話を合わせながら僕らはソサカ君がいるであろう食堂へ向かう傍ら、僕はアカリちゃんに気づかれないようにこっそりとメモをする。

 タツキさん、ワンポイント獲得。





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category: ◆小説(文字系ネタ)

2012/11/29 Thu. 01:10 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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