骨組段階

小説サークル『骨組段階』のブログ。作品情報や設定、小ネタなど更新しています。

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 困ったときにマニュアルを読むのは、誰にとっても常識ではないだろうか。身動きの取れない状況に僕がまずとった行動は、手にした指令書をくまなく閲覧することだった。調査対象を辿って行くという項目には、その対象が『該当なし』だった時の対処法は書かれていないし、同率一位が有効かどうかも一覧には載っていない。そもそも『該当なし』の意見が有効なのかどうかすら掲載されていないのだから、指令書は何の役にも立たない紙切れに等しかった。
(完全に詰んだ……!)
 思わず机に突っ伏すと、アカリちゃんから事情を聞いた勝さんが「いやー、悪い悪い」とやはり悪びれた様子もなく笑いながら頭を掻いていた。
「まさかそんなランキング作ってるとは思わなくてさー」
「……いえ、勝さんは悪くないんですが……」そう答えながらも、心の底ではちょっとばかり恨みたい部分もあるわけで。「……ちなみに、なんですけど、答えを改めるじゃないですけど、やっぱり思いついた人の名前とかありません?」
「ねぇーなぁー」
 即答だった。
 …………。
 …………この野郎。
「で、何? 今はおれのせいで詰んじまったのか?」
「そうなります……」
 僕はこれ以上聞き取りが出来ないことと、票数が同じのため結論が出ないことを説明する。
「調査の打ち止めについては、予測出来そうなもんだけどなぁ」
 僕が放置していた指令書に目を通しながら、ヒギリさんは言う。
「調査対象が誰もいないって答えたらそれで終了だし、答えが被ってもアウトだろ?」
「答えが被っても、ですか?」
 きょとんと首を傾げたのはアカリちゃん。
「だってほら、ぐるぐる回っちゃうじゃん。今回の場合もさ、もし、タツキがすぐ兄じゃなくてソサカを指名してたら、そこで調査終了だろ?」
 ソサカ君からタツキさんへ聞き取りをして、
 タツキさんからソサカ君へ聞き取りをすることになるのだが、
 勿論そんなことは出来ないのだから、その時点での結果を結論とすることになるのだろう。
「もしそうなら、ここまで悩まなかったんですけどね……」
 その時点ならソサカ君が首尾になり、納得のいく答えを出せたのだ。
「まぁ確かに、同点一位にするには、該当なしってのが微妙な感じだもんなぁ」
 うむむ、と腕を組んで考え込むヒギリさん。
「じゃーさぁ、聞き取り続けちゃったらいーんじゃね?」
 けろりと言ったのは勝さんだ。
「おれみたいな該当なしの場合は、セージが聞き取り対象を選べるってことにすりゃいーじゃん」
「すりゃいーじゃんと言われましても……、指令書には何も記述がありませんし」
「記述があればいいんなら、おれが書いてやるよー」
 ほれほれ、と勝さんは少し離れた書斎机に駆け寄ると、僕の制止を無視してさらさらと一文を付け足した。
「これでオッケー!」
 ぐっ、と親指を突き出す勝さん。頭が痛いのは、彼の白い歯がまぶしいからだろうか。
 助けを求めるような気持ちで視線を動かす。アカリちゃんは「良かったね、セージくん!」とにこにこ笑っているし、ヒギリさんは「さっすが、すぐ兄だなー」とやはり笑っているし、ナオキに関してはヒギリさんから追加でもらったカップケーキをもくもくと食べているだけだった。頭痛が増した僕は、タツキさんの方を見たまま口を開くことが出来ない。
「……まぁ、いいんじゃね?」
 難色を示しながらも、タツキさんが頷いたので、僕は諦めることにした。
「じゃあ、次の調査対象を考えましょう……」
 げんなりとしながらも、僕は頭を切り替える。
 ここでの選択が今後の展開を大きく変えることは間違いない。ここからの調査はいわば延長戦だ。僕からすれば、一刻も早く自由な時間を過ごしたいわけで、ある程度結論を左右する形になるのも致し方ないと割り切るべきだろう。
「一応、調査終了の目安を作っておいた方がいいですよね」
 延々と聞き取りをする仕様のままでは、今日中に調査が終了するとは思えない。かといって、また同じように詰んでしまっては堂々巡りなのだ。
「とりあえず、ここからの調査は追加、という形になりますから、一位と二位の票差が発生した時点で終了としましょう」
「おっけー、書いとく!」
 ガリガリと文面を増やしてしまう勝さん。何を言ったところで、書かれたインクは消えないのだから、僕はもう黙っておくことにした。
 それよりも今は調査対象についてだ。一早く調査を終了させるには、勝さんに票を稼いでもらうのが一番だろう。苦労した結果が該当なしというのは、流石の僕でも納得が出来ない。
 単純に考えれば、勝さんを慕っている人を指名すればいいのだが、僕が思いつく範囲ではヒギリさんとタツキさんの二人くらいのものだ。勝さんの所属はハウンドというだけあって、交友関係もそちらに展開されているのだろう。イデアルに属する僕では見当がつかない。
「……勝さん」
 こうなれば、本人に聞くのが一番だろう。
「勝さんと親しい人って、誰がいます?」
「淀!」
 即答も即答。
 それも全力の即答だった。
 とはいえ、淀染さんがキングオブ1123に勝さんを指名するとは到底思えない。彼女にとっての勝さんは、良き兄どころか良き友人としての地位すら危ういのだ。
「……出来れば、他の人でお願いしたいんですけど」
「なんだよ、セージ! お前、淀が相手じゃ不足っていうのか!」
「いや、そういう話をしているのではなくて……」
「っつーか、おれは一刻も早く淀に会いたい! だから、次の相手は淀にしよう!」
「そんな強引な!」
 ガキ大将レベルの持論を展開されてしまった。
「ごちゃごちゃ言うんなら仕様変更だ!」
 強引さは持論だけでは済まず、勝さんはザザザッと指令書に手を加え始めたじゃないか。
「ちょ……! 何書いてんですか!」
 慌てて指令書を奪い取る。一体何を改悪したのかと視線を下ろすと、調査対象が該当なしと答えた場合の対応法が書き換えられていた。調査員が次の調査対象を指名する、という一文が何本もの線で強引に消し込まれ、該当なしと答えた場合は調査対象が次の対象を指名する、と勝さんの都合の良いように変更されている。
「ああぁもう! なんてことしてるんですか……ッ!」
「まーとにかく、指令書の通り、次の相手は淀ってことで!」
 ははははは! と勝ち誇ったように笑う勝さん。言い返す気力なんて、僕には到底残っていなかった。



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category: ◆小説(文字系ネタ)

2013/03/07 Thu. 03:12 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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