骨組段階

小説サークル『骨組段階』のブログ。作品情報や設定、小ネタなど更新しています。

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◆001 

学園パロネタのため、折りたたみ中!

「どんなネタだって平気だよ!(`・ω・´)」っていう心の広い方のみ追記よりどうぞ。




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◆001

 ピカピカとした制服に身を包んだ新入生たちは、緊張を顔に張り付けじっと椅子に座っている。一カ月もすれば、同じような状況でも、そわそわと身を動かしたり、隣の友人と小声で余所事を話したりするのだろうが、流石に入学初日からそんな馬鹿をするやつはいないようだった。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」
 在校生代表挨拶。この学園の生徒会長であるヒギリが、どこかつたない声で挨拶を始める。毎月の全校集会で挨拶をしているヒギリだが、いつもの彼女の挨拶は明らかな口語体によるもので、形式という言葉からはかけ離れている。学園内の教師だけなら、そんな挨拶でも許容してくれるわけだが、入学式となれば余所からの来賓客も当然訪れる訳で、そちらのひんしゅくを買わないようにと、ヒギリは珍しく頭を捻らせて挨拶を考えていた。まぁ結局、「これでいいかなぁ?」と持ってきた原稿が悲惨過ぎたので、オレが書き直した訳なのだが。
「ヒギリちゃん、ガッチガチだねぇ」
 檀上の袖。後に新入生への顔合わせとして、オレら生徒会のメンバーは暗幕の影に身を潜めている。来賓客の目にも耳にも留まらないのを良いことに、会計のニトロはへらへらと笑った。
「あれでも大分マシな方だぞ。最初はもっと、『カンペ読んでます』って感じだったから」
「ふぅーん。タツキってば、練習付き合ってあげてたんだー」
「仕方ないだろ。あいつがトチったら、オレらも叱られかねないんだぞ」
 連帯責任って言葉があるだろ、とオレはニトロに言ってのけたが、肝心のニトロは「別に大丈夫だと思うけどねー」と気にも留めない様子だった。
「っつーかお前、もっとマシな恰好出来なかったのかよ」
「ぼくはいつもおしゃれで格好いいスタイルじゃん。今日だって完璧でしょ?」
「チャラいんだよお前の恰好は!」
 金髪に碧眼なのは生まれつきだからしかたない。問題なのはその金髪がふわっふわにセットされていることだ。自然界の力だけではなしえない髪の流れは、明らかにセットされたものであり、つまりそれは校則違反ということになる。髪の長さはどうしようもないが、派手な緑色のヘアピンくらいは没収した方がいいに違いない。すっと手を伸ばしたオレだったが、ニトロはその思考を感じ取ったのか、さっと後ずさってオレから距離をとった。
「ちょっとくらい平気だって~。来賓席だってさ、あれだけ遠いんだから何がついてるかなんてわかりゃしないよ」
「何かついてるくらいは判別できるだろうが……。っつか、ネクタイもしめろ。ブレザーも閉じろ!」
「えー、やだよぉ」
 だらりと垂れ下がったネクタイに、前の開かれたブレザーは、いくらなんでも遠目からしっかりと認識できる校則違反だ。
「カチっとした格好だとさ、真面目でとっつきにくいって印象与えちゃうでしょ? ぼくとしては、可愛い新入生ちゃんたちには、気軽に話しやすそうな先輩って認識してもらいたいんだけどなぁ」
「ですが、その恰好では、話しやすそうと認識される前に、だらしないと認識されると思いますけどね」
 ぴしゃりとニトロの意見をはねのけたのは、生徒会書記であるアスターだった。
「普段の格好にまで口を挟むつもりはありませんが、正式な行事ごとにもその格好というのは、好感よりも嫌悪感を抱く人のが多いと思いますけどね」
「えー、そうかなぁ? アスターみたいな生真面目っぽいスタイルよりマシじゃん」
 にっこりと笑って答えるニトロ。対するアスターも、にこりと微笑んでいる。
「別に僕は、生真面目でもなんでもありませんけどね」
 そう答えながらも、アスターは制服をしっかりと着こなしている。ニトロのように着崩すことなく、ネクタイを締め、ブレザーもしっかりと袖を通してボタンも閉め、真っ直ぐに伸びた背筋も相まって、校則の模範的な印象を覚える容姿だった。ニトロと同じ金髪でも清潔感が感じられるのは、さらさらと重力に従っているからか、はたまた、銀フレームの眼鏡のおかげなのだろうか。何はともあれ、ニトロと比べるまでもなく、アスターは非の打ちどころのない服装だ。
「ニトロさんはその髪型だけで十分キャラづけ出来ますから、制服ぐらいはしっかり着てくれませんか? 生徒会の株が下がりかねませんので」
 にっこりと、紫紺の瞳を細めながら、容赦なく吐き捨てるアスター。
「それともあれですか? ニトロさんは、他人と違う格好をしなければ、認識されない程度の人間ということなんでしょうかね? ……まぁ、それならそれで、そのだらしない恰好で登場したって構いませんが」
「着ますよ! 着ればいいんでしょう! 着れば!」
 アスターの物言いに、ニトロはぷんぷんと頬を膨らませながらもネクタイを正し始める。
「それよりも、今年は何人集まりますかね」
 カチリと座る新入生を眺めながら、アスターはぽつりと呟く。
「僕らの代が豊作だったとはいえ、去年の二人は少なすぎですからね。今年も同じような状況なら、予定の見直しを行わないと……」
「まぁ、一人は確実に入るわけだが……、……こればっかりは、運としか言いようがねーしな」
 限られた才能を持った人材。いくらこちらが望んだところで、そんな人材が集まるかどうかは『運』でしかない。
 大々的な募集はしていないし、そもそもその才能に自身で気づけるものは限りなく少ない。たとえ、その少ない人材がこの場にいたところで、オレたちに協力してくれるかどうかはまた別の話なのだ。
「でもあれでしょー? サーニャ先生の占いでは、今年は豊作って出たらしいじゃん? そんなに気にしなくてもいいと思うけどねぇ」
 衣服を正したニトロは、のんびりとした様子で笑う。
「それよりもぼくは、ヒギリちゃんがトチらないかが心配だなぁ」
「流石にここまでこれば大丈夫だろ……」
 挨拶はすでに終盤に差し掛かっている。ヒギリの声も、そのことに安堵したのか柔らかさを取り戻し、スムーズに言葉を紡いでいた。楽観視するオレとは対照的に、二人は「どうかなぁ」「ヒギリさんなら、やらかしかねませんよ」と心配した様子でヒギリを見守っている。
「原稿はここで終わりだ」
 オレは二人に説明する。一言も噛むことなく原稿を読み終えたヒギリは、嬉々とした様子で口にする。
「以上で、生徒会代表、ヒギリの挨拶を終了しましゅ!」
「………………」
 勢いで頭を下げたヒギリだったが、盛大に噛んでいたのは誰の耳にも明白で。
「ほらみなよー、やっぱ噛んだじゃん」
「相変わらず、詰めが甘いですね」
 からからと、声を上げて笑うのはオレの隣にいる二人くらいなもので、ガチガチの新入生たちは、先輩の失態を笑ってはいけないと必死に肩を震わせてこらえているようだった。この微妙な沈黙が、なんとも痛々しい結果を招いてしまっているのだが、生徒会副会長のオレとしては、会長である双子の姉の失態に頭を抱えることしか出来なかった。



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category: ◆学園パロ

2013/05/31 Fri. 01:43 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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