骨組段階

小説サークル『骨組段階』のブログ。作品情報や設定、小ネタなど更新しています。

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◆002 

 学園パロなので折りたたみ中。

 学パロ内では、ガラケーもスマホも一括で『携帯』として表記してますよー。
 生徒会男子はみんなスマホっぽいですねー。





   **********



◆002

「タツキー! どうしようどうしよう!」
 気まずい空気の中ではあったが、無事に入学式は終了。明日からの職務に備えて生徒会室へ戻ったオレに、案の定ヒギリは泣きついてきた。
「折角! 折角良い調子だったのにやらかしちゃったようわぁぁぁん!!!」
「ヒギリさんが何かやらかすのはいつものことじゃないですか」
「ちょ、何それ、アスターひどい!」
 わーぎゃーと騒ぎまわるヒギリに対し、アスターはけろりとした様子で「ぼくは事実を述べただけですよ」と微笑んだ。えげつない。
「でもでも、あの空気はマズいだろ! 白けすぎだろなんなの! もっと受けてもらった方があたし的には救われるんですけど!」
「仮にも先輩の、それも生徒会長を笑い飛ばせるやつはなかなかいないだろ……。在校生と違って、お前がどんなキャラとか知らねーんだし」
「正直、最後まで噛まずに挨拶を終えたところで、明日の集会挨拶でどんなキャラか露呈しますからね。大した差はありませんよ」
「いや、大きな差がある!」
 アスターのちょっとズレたツッコミに、ヒギリは握り拳を作って反論する。
「今日のあたしは明らかにスベッた印象しか与えてなかった! 面白い先輩っていうよりは、痛い先輩って認識だ! そんなのヤだろ! 耐えられないだろ!」
「あの時に爆笑されてたら平気なのかお前は……」
「楽しいならそれでいいじゃん。思い出にだって残るんだしさー」
 むすっと頬を膨らませるヒギリ。その間抜け面が気に入らなくて、「その顔やめろ」とオレはヒギリの頬をぎゅっとつまんだ。
「タツキひでー! 負傷者には優しくしろよぉ!」
「お前どこも負傷してないだろ」
「今のあたしは、心に敗北という大きな傷を負った、れっきとした負傷者なのですよ!」
「だったら大人しく寝てろ!」
 もっと落ち込むかと思いきや、ヒギリは異様に高いテンションでぷんすかと謎の理論を展開していく。本当に、どうしてこんな奴が生徒会長を任されているのかとオレは毎日疑問で仕方がない。
 ヒギリがどういう奴なのか、オレはよーく知っている。なんといっても、双子の姉だ。生まれた時から、オレは嫌というほどヒギリの面倒を見てきたのだ。ヒギリは女だというのに、亜麻色の髪が長くなったことは一度だってないし、黄金色の瞳はいつまでたっても少年のようなやんちゃな光を宿し、しおらしさとか女らしさとは無縁のままだ。――まぁ、体つきくらいは女らしい部分はあるにしろ、男子並みの身長があるせいで可憐さはあまり感じられない。人によっては『スタイルが良い』とか『美人』とも言われるヒギリではあるが、ご覧の通りな言動のせいでオレには『残念な姉』という認識しかされないのである。その手の情報通であるニトロには、「あれで結構、ヒギリちゃんって人気あるんだよ。顔はいいし」と言われることはあるが、女好きのニトロに『顔は良い』という『中身が残念』とも受け取れる烙印を押されるくらい、ヒギリは『残念』な奴なのだ。
「っつーか、ヒギリ。身内として言わせてもらえば、お前が盛大に噛んだせいで総スカン喰らったことより、校長のスピーチに上げた悲鳴の方が恥ずかしかったぞ」
 代表挨拶後、テイラー学園のツバキ校長から挨拶があった。形式にこだわらない校長は、案の定、形にとらわれない切り出しでスピーチを始めた。 
「はーい、みなさん! テイラー学園の校長の、ツバキでしゅよー」
 その掴みは完全に、直前で噛んだヒギリを真似たネタであり、笑うまいとこらえていた新入生たちの気力を完全に打ち砕く結果となった。会場はどっと笑いが起こり、緊張の糸が一気に崩れてなくなる。そんな中、恥ずかしかったのであろうヒギリは「うぎゃぁぁぁ?!」と悲鳴(というかただの奇声)を上げて顔を真っ赤にしていたりした。
「だって! だって、あんなの反則だろ?! あたしの時はうけなかったのに、どうして校長の時はうけるんだよ! 余計恥ずかしいよあたし!」
 その時の状況を思い出したのだろう、ヒギリは顔を真っ赤にしながらぶんぶんと両腕を振って気持ちを誤魔化している。
「でもでも、よくよく考えるとあれは、校長があたしに宣戦布告したもんだと思うんだよ」
「は?」
「だからさ! あれは『あたしなら皆さんを笑わせられますよふふふーん♪』ってことなんだよ! 喧嘩売られたんだよあたしは!」
「お前、マジで一回保健室行ってこいよ」
「馬鹿につける薬はありませんから、無駄足でしょうに」
 それより早く仕事片付けましょうよ、とアスターは顔をしかめている。
「貴方方の下らない話は、お家に帰っても出来るでしょう? 早く残っている仕事、片づけてくれません?」
「あー、悪い悪い」
 これでようやくヒギリから逃げ出せると、オレはすぐさま作業に取り掛かる。
 残っているのは、明日の集会で配布する冊子を閉じ作業だ。いつもなら二年生に頼めるのだが、今日は入学式。登校しているのは新入生と、部活動を行う一部の在校生だけだ。オレたちで片づけるしかないのである。
 と、そこでようやく、ヒギリは気持ちが落ち着いてきたようで、きょろりと生徒会室を見渡した。
「あれ? そういえば、ニトロは?」
「サボリですよ」
「サボり?」
「本人は、新入生に校内の説明などをしてくると行き勇んでいましたが、どう考えてもそんなことをする人じゃないでしょう、あの人」
「説明と称したただのナンパだよなぁ……、それ」
 うーん、と腕を組んで考え込むヒギリ。
「一応ニトロも生徒会メンバーなんだし、あたしがビシっと指導しとくべきかなぁ?」
「ヒギリさんが言った程度で治るなら、彼はもっとマシな人間に育っているはずですよ」
 何を言っても無駄だから放っておけと目で語りながら、アスターは黙々と作業を続けている。アスターの放つ早く帰りたいオーラを察したのか、ヒギリは「それもそうだなぁ」と席について作業を始めた。
「そういやさ、折角の入学式なのに、一人休んでるみたいだったな」
 パチンパチンと紙を閉じていきながら、ヒギリはぺらぺらと口を開く。
「初日からサボりだったら、良い神経してるよなぁ。あたしちょっと勧誘したくなる」
「お前の勧誘センスがわかんねーよオレは」
「単なる体調不良ではないんですか? 緊張でお腹を壊したとか、その程度のものでしょう」
「だったら良いんだけどさー、なんかちょっと気になったんだよね」
「相変わらず、変な勘してますね」
 棘のある内容ではあるが、アスターの口調は柔らかい。鼻で笑い飛ばすことが出来ないほどに、ヒギリの勘は当たるのだ。それはアスターも、身を以て知っている。
 ふと、軽快なメロディが、生徒会室に鳴り響いた。確か、料理番組のテーマ曲か何かだ。「あたしあたしー」とヒギリは自分の携帯を探し始めるが、「そんな着メロ使うのお前だけだろ」とオレは思わずつっこんだ。「確か白滝さんも同じの使ってましたよ」とアスターが言うと、「お揃いなんだー、いいだろー」とヒギリは自慢げに笑う。どうせならもっとマシなので揃えろよ、と思ったが、ヒギリが携帯を取り出したので話が長くなりそうなことは口にしないでおくことにした。
「あれ、リッちゃんだ」
 着信相手は二年生のリコリスのようだ。珍しい相手に、オレは思わずアスターに確認する。
「今日って別に、倶楽部の活動してないんだよな?」
「二年だけでは戦力不足でしたからね。指示は出していませんよ」
「もーなんだよお前ら! あたしは、普段からリッちゃんに慕われてんだぞ! 一緒に遊びに行ったり、相談事のったりだってしてんだからな!」
 ぷんぷんとひとしきり頬を膨らませてから、ヒギリは通話ボタンを押した。
「はいもしもし、ヒギリです!」
「……あ! ヒギリさん! お疲れ様です!」
 お仕事中にすみません! とリコリスのよく通る声は、オレたちの耳にもよく届いた。
「ううん、平気だよ。それより、どうかした?」
「はい、あの……その……。ひっっじょーに、申し上げにくいんスけど、ちょっと確認したいことがありまして」
「確認したいこと?」
「はい。自分は今、玄関ホールの傍にいるんですけど、そこで双子さん方が女子生徒に声をかけてるのを目撃しまして」
「双子がナンパしてんのな」
「はい。多分一年生でしょうね、女の子、困ってたようなのでちょっと止めたんですけど、ニトロさんが言うには『生徒会の仕事だから、邪魔しないでほしい』とのことで」
「………………」
 ちらりと、オレらの方に視線を向けるヒギリ。『まさかタツキ、そんな指示出したのかお前……!』と言いたげな視線に、オレは無言で首を横に振る。隣に座るアスターも、呆れた様子でオレに習う。
「それで、再び女子生徒に声をかけているのですが、どう考えてもヒギリさんたちがそんな指示を出すと思えなくて……それで、確認したくて……!」
 先輩方を疑うわけではないのですが……ッ! とリコリスの切実な声が聞こえてくる。
「うん、リっちゃんの考えてる通りだよ。単に、双子がバカやってるだけ」
「じゃ、じゃあ、シメちゃっても平気ですか?!」
「シメちゃってシメちゃってー! ……うーん、ってか、アレだなぁ。あたしからもガツンとやっといたほうが良さげかな、こりゃ」
「おー、行ってこいよ」
 冊子を作るという作業は、大した労力はかからない。不器用なヒギリが抜けたところで、作業状況に支障はないだろう。
 むしろ、ニトロを放置する方が問題だ。効果があるかどうかは別として、生徒会がどうしようもない生徒をきちんと取り締まっているという認識を、新入生に示す必要があるだろう。
「じゃ、リッちゃん。あたしそっちに行くから、ちょっと双子見張ってて!」
「了解です!」
 ピッ、と通話を終了したヒギリは、オレたちにビシッと敬礼をしてみせる。
「そーゆー訳なので、会長ヒギリはナンパ撲滅に取り組んでまいります! ニトロこらしめたら戻るから、後はよろしくな!」
「はい、どうしようもないナンパ野郎の撲殺、頑張ってくださいね」
「ボコりはするだろうけど、殺しはしないよ流石に!」
 律儀に反論しながらも、ヒギリは慌ただしく生徒会を駆けだしていく。
「……アリョーシャに見つからなければいいけど」
 廊下を走るな。学校にはつきものの一文が頭によぎる。頑固で有名な教師――アリョーシャが、職員室でせっせと仕事していることをオレは密かに願うことにした。



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2013/06/11 Tue. 14:10 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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