骨組段階

小説サークル『骨組段階』のブログ。作品情報や設定、小ネタなど更新しています。

07« 2017 / 08 »09
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

◆003 

 学パロネタなので折りたたみ中。

 リッちゃん、小説の初登場がこれとかマジごめん……(´・ω・`)




 ******


◆003

 ヒギリさんに連絡をしたものの、今度の女の子たちは双子さん方のエスコートを嫌がっている様子はなかった。むしろ、『カッコイイ先輩』に優しくされ、嬉しそうな様子ではしゃいでいる。外見に騙されているなぁ……、とあたしが白い目を向けてしまうのは、彼らの内面を知っているからだろうか。
 あの二人は、とにかく節操がない。誰彼構わず手を出すし、口説きにかかる。そういう人達だと知った上で付き合うなりなんなりするのは個人の都合でしかないが、右も左もわからない新入生に付け入るような真似はどうもやっぱり許せない。次に嫌がる女生徒が現れたら、とっちめてやるつもりで、あたしは目をギラギラと光らせた。
 あたしのいる玄関ホールは、学園の中央に位置する。ヒギリさんがいた生徒会室は、東棟の三階だ。全速力で駆けつけてくれたとしても、数分の間が生まれてしまう。名目上は『校内の案内』となっているだけあって、双子さん方と女生徒たちは、玄関ホールから離れ、講堂の方へと進んでいく。あたしは物陰に身を潜めながら、そろそろと一行の後をつけた。別に、堂々と歩いたって良いんだけど、ニトロさんに気づかれて、警戒されてしまうのはちょっと困るのだ。ヒギリさんが来た時に、逃げられてしまってはこらしめようがない。
(あ、ヒギリさんに連絡しなきゃ……)
 一行が立ち止まったのを見計らい、あたしは携帯に視線を落とす。それから、見つからないように柱の陰にしゃがみこみ、身を隠すことを徹底した。残念ながら、あたしがメールで『講堂に移動してます』の一文を打つのには、とてつもなく時間がかかるのだ。
 携帯を買ってもらったのは、学園に入学した一年前のこと。父さんが「友達作るのに必要だろう」と買ってくれたのだ。けれども、あたしは、この『メール』というのが凄く苦手だ。電話の使用頻度は一般的な女子高生と大差ないとは自負するも、メールに関しては、仕事で嫌々携帯を持たされたオジサンと大差ないレベルなのである。
 ぽちり、ぽちりと、時間をかけて文字を打っていったあたしだったが……、
「『ど』ってどうやって打つんだっけ……」
 『た』を連打しても『と』の次は『ど』ではなく『小っちゃいつ』で、どうあがいても入力が出来ない状態だった。うぅん……、と唸りながら携帯をいじくっていくあたし。
「『と』の後は『だ』で良いじゃないか……! 『だぢづでど』からの『小っちゃいつ』だろ……!」
 途方に暮れるあたしだったが、傍に操作方法を聞ける相手なんていない。もういっそ、濁点のないまま送ってしまおうかと思い始めると、
「濁点はねぇ、ここでつけるんだよぉー」
 という、親切な声と共に、背後から伸びた手でボタンが押された。『と』が『ど』に変身したことに喜ぶ間もなく、あたしの背筋は凍りつく。
「にしてもリッちゃんってば、意外と機械音痴なんだねぇ~」
 えへへー、とあたしの背後ではにかんでいる男は、監視対象の片方であるファイのものだ。「んなっ?!」驚きながら距離を取ろうにも、いつの間にか背後に回り込んでいたファイは、あたしの身体にのしかかるように抱き着いているため立ち上がることすらままならない。
「な、何でファイさんがここにいるんすか!」
「それはこっちの台詞だよぉ。リッちゃんってば、どうしてぼくらを付け回すような真似してるのさぁ~」
「そ、それは……」一応は口ごもったあたしだったが、よくよく考えれば先程の発言であたしが二人に対して敵意を向けていることくらい分かりきっていることだ。はぐらかすのも馬鹿らしくなってくる。「お二人が変な真似しないか心配なんですよ。新入生は、お二人がどんな方か知らないわけですし」
「そうだねぇ、一年生ちゃんたちは、ぼくらのこと知らないんだよねぇ。だからこうやって、お互いの理解を深めるために、校内の案内したり、おしゃべりしたりしてるんじゃんかー」
「ただのナンパですよ、それ」
「お互いに楽しく過ごしてるんだから問題ないよー」
 うふふー、と笑いながら答えるファイ。
「でもねぇ、男女平等を掲げるぼくとしては、男の子にも優しく案内をしてあげなきゃいけないと思うんだよねー」
「入学初日からトラウマ作るのとかマジやめたげてください」
 えー、トラウマじゃなくて思い出だよぉ、と頬を膨らませているであろうこの男は、男女平等にナンパが出来る危ない人である。付き合いの長いあたしは相手するのに慣れているが、免疫のない新入生が彼の毒牙にかかるのだけはなんとも避けたい状況だ。
「ってか、いつになったら離してくれるんですか?」
「ぼくは寂しん坊だから、いつまでも人のぬくもりを感じていたいタイプなんだー」
「何その答えになってない答え!」
 いいから離せよ! とじたばたするが、残念ながら彼の手中から逃れることは出来なかった。
 もしや……、と、あたしは柱の影からニトロさんたち一行へと視線を向ける。案の定、一行の姿はなく、ファイが囮に残された様子だった。
「くっ……! 邪魔しないでください! あたしはニトロさんをこらしめなきゃならないんです!」
「大丈夫だよー、こらしめられるようなことしてないもーん」
「だったら何で逃げるんすかー! 逃げるってことは、やましい所があるに決まってるじゃないっすかぁーッ!」
「それはニトロにしか分からないから、ぼくからはなんとも言えないよぉ。……それより、リッちゃん」
「……なんすか」
 急に改まった態度で、ファイは静かに言う。
「ぼくはね、部活の勧誘の先駆けとして、新入生のチェックもしてたんだよ」
「部活……っすか? 倶楽部の方ではなく?」
「倶楽部はぼくらの意志ってあんまり関係ないでしょ。適性がなきゃ入れないし……」
「まぁ、それはそうっすけど……。けど、部活の勧誘は明後日からっすよ。フライングは卑怯じゃないっすか」
「やだなぁ、リッちゃん。フライングじゃなくて、根回しと言ってくれないかなぁ」
「対して意味変わってないっすよ」
「まぁ、とにかく、ぼくは軽音部にふさわしい子がいないか目を光らせてたのですよ! そしたらね! 超かわいい子がいたんだよぉ~!」
 憧れの先輩を見つけた女子生徒のようなテンションで語りだすファイ。念のため言っておくが、ファイはニトロさんの双子の兄であり、紛れもなく立派な青年だ。ニトロさん以上に着崩した制服に、よく分からない紫のポンポンがついたゴムで前髪を縛っている彼を、中には『可愛い』と評価する奇特な人がいるらしいが、あたしから言わせれば彼は『顔が良いのが唯一の救いなただの変態』でしかない。
「……ちなみに、なんすけど、その『超かわいい子』ってのは、女子ですか?」
「もぉー、リッちゃんってばぁ。可愛いのは男の子に決まってるじゃんかぁ!」
「決まってねぇーよバカぁっ!」
 思わずこぼした暴言にも、ファイは腹を立てることなく、むしろどこか嬉しそうな様子で「うふふふー」と笑っている。そののんびりとした様子から、説得して解放してもらうことは不可能と判断したあたしは、上半身を低い位置へと移動させ、すぐさま反復することでファイの顔面に頭突きを炸裂させる。「いだっ?!」という悲鳴と共に緩んだファイの腕の中から、あたしはするりと脱出した。
「もぉ、リッちゃんったら……、ヤるならヤるで言ってもらわないと~。流石のぼくでも、急にこういうことされても、愉しさが半減しちゃうんだからね!」
「別にお前に楽しんでもらうために頭突きしたんじゃねーよ」
 うふふふふふー、と怪しげに笑うファイに、あたしはぴしゃりと言ってのける。
 それよりも。
 あたしは目標の位置を確認すべく駆け出した。講堂内に目を光らせたあたしだったが、そこにニトロさん一行の姿はなく、つまりそれは完全に撒かれてしまったことを意味している。
「な、なんてこった……!」
 思わぬ失態に愕然とするあたしに、ファイは顔面を押さえながらいつものようなイラッとする力のない笑顔をへにゃりと浮かべる。
「ねー、リッっちゃん。一緒に部活勧誘してこよーよぉ」
「うっさい、黙れ!」
 怒りに任せ、ファイの腹部に正拳を炸裂されるも、肝心の彼は懲りたようすもなく、やっぱりどこか嬉しそうに「リッっちゃんってば相変わらず激しいなぁ~」と恍惚とした様子であった。



 ←002 ◆ 一覧 ◆ 004→
スポンサーサイト

category: ◆学園パロ

2013/06/14 Fri. 18:34 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

コメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://honegumidannkai.blog.fc2.com/tb.php/417-4878e75e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top